コラム

未来を生き抜く子どもの教育 第5話 『言語の世界だけで算数を解くと自頭が強くなる』
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数学の分野で論理式を活用されています名城大学竹内先生と水王舎代表取締役の出口汪との対談「未来を生き抜く子どもの教育」の第5話をお届けします。
今回は、算数を公式で解くのではなく「論理で解いていく強さ」についてお話しいただきます。

第4話では、何かを解決するには、論理の積み重ねの重要性についてのお話でした。今回は特に小学校で算数を論理で解いていくことで、大学受験にまで対応できる強さが身に付くという内容でお届けいたします。

社会に求められる人材の変化~HOW型からWHY型へ

竹内先生

竹内先生

算数・数学を解くときに何も考えずに公式に当てはめて解いてしまう・・・ずっと昔から言われているのですが、HOW型とWHY型という2つの学びの形があります。
センター試験というのはどちらかというと、覚えた公式に当てはめていかに早く解くか・・が重視されていました。それは日本の教育とその先の社会がいかに早く効率的にやるという人材が求められた時代にはぴったりでした。
ところが、今時代が変わって自分の頭で考える、HOW型からWHY型が求められるようになり「本当にこの公式でいいのだろうか、この公式でもできるのだが、なぜこの公式でやるのが優れた解法なのだろうか」というWHY型の転換というのが、まさに我々教育者のキーワードになっています。

日本語を使えるのに、なぜ国語を学ばなければならないのか

まさにそうですね。
あと、なぜ国語が必要なのか、とお考えの方がいるかと思います。私たちは日本語で喋っていますが私が今、幼児教育で求めているのは日常的な単なる日本語の使い方ではなくて、言語を論理として認識し、物事を整理して論理的に考え、さらに大事なことはその先にあるコミュニケーションとしてアウトプットできるようになることです。
グローバル時代に論理的に話し、論理的に書く力はこれまでより大事になってきたと思うのです。特にSNSで不特定多数の人が見ているにも関わらず、町中を裸で歩いたり、泣きわめいたりといったような人がネット上にいる印象を受けることがあります。非常に感情的でヒステリックな言動をまき散らすような人がいっぱいいるというか・・。これは大人たちが論理も学ばずにいきなりネット社会に飛び込んでしまったために起こっていることだと思うのです。

これからの時代はしっかりとメディアリテラシーも含めて、他者意識を持ってきちんと言葉を使って、ネット社会でも不特定多数に向けて論理的に発言していくような力というのが何よりも私は必要だと思うのです。

ですから「国語って今まで何の為に勉強するの?日本語を喋れるし本も読めるしいらないんじゃないの?」と思った方いらっしゃるかもしれないですが、とても大事なことなのです。例えば、大きな会社の社長が書いたブログの文章が日本語で間違いだらけだったら「何で?この人が社長?」って思いますよね。
でも、相手が偉いから誰も「あなたの日本語はおかしいですよ」なんて言わないので、ずっと間違った日本語を書き続けてみんなに見られている・・・その損失はすごく大きいと思うのです。子どもの時に勉強していれば、そんなことなかったのにと思いますね。

昔はネットがなかったので、そういった文章を誰にも見られることがなかったわけですけれども、今は国語が実用面でもすごく大事になっています。
算数は幼児期に学ぶものですので、やはり脳をどう作っていくのかが大事かなと思います。
幼児期に作った脳、その頭を使って次の領域に入っていく・・算数から中学校の数学の分野になってくる、私はここは分けて考えているのですが、いかがでしょうか。

出口先生

出口先生

言語の世界だけで算数を解くと自頭が強くなる

竹内先生

竹内先生

今先生がおっしゃったように、算数と数学っていうのは、抽象度も違うのですけれども、私はすごく算数が大事だと思っています。よく小学校の時、文章題に困っている子が多いのですが、中学校で方程式を習うと置き換え的に式を立てて答えが出るので、何も困らないのです。その流れを見ていくとよく「だから小学校の時、算数で文章で悩む必要ないんだよ。中学校で機械的にできるようになるから」というふうになってしまいます。
それは私は全く違う問題の話だと思っています。小学校の算数というのは、少ない道具の中でどうやって解決するかというところが一番面白いところなのです。そして、その少ない道具というのが、論理なのです。

ところが、中学校になって道具が増えていくと、それをシンプルにやるか代数的にやるかというところが大事だと教えています。
ちょっと受験の話になってしまうのですが、例えば東京大学の生徒さん、彼らは受験では確かに賢く、数学ももちろんよくできます。
でも、彼らはそれだけではなく、特にすごいことは、単に受験数学ができるだけではなくて算数でいうと、方程式で解けば簡単に解けてしまうような問題でも、算数の世界で解いてみようとか、できるだけ少ない道具で論理だけで考えてみようっていうようなことを中学受験で徹底的に鍛えられているのです。
中学受験を肯定しているつもりではないのですが、僕は中学受験の算数のいいところというのは方程式とかグラフ、関数とかを使わないで、言語の世界だけで算数を処理するというのは、すごく自頭が強くなるものだと思っています。
そこである程度トレーニングされていると、中学校・高校になって、方程式の世界になっても強いのです。本当に論理というものがすごく大事だなと感じています。

言葉を習得し、どう使っていくかという教育を子どもたちに

今の話は、私はすごく嬉しいですね!私が本当にずっと思っていた算数の考え方です。数学の方が実際世の中に役に立っているのかもしれないですけれども、算数は脳を作っていくために必要なものじゃないかなと思います。

さきほど、自頭という表現をされましたけども、自頭となると、ちょっと誤解されるの方がいるかも知れません。生まれつきの頭の良し悪しという誤解をされやすいのですが、一人一人が違った遺伝子を持っていて、それらが無数の要素で絡み合って、一つの能力というものができているわけですから優劣じゃなくて個性だと思うのです。

言葉っていうのは生まれた後、習得するものですから、後天的なものです。その言語には、国語の言葉と算数の言葉があります。大切なことは後天的に得た国語と算数の言葉をどう習得し、どう使っていくのか。それでどう脳を作っていくのか、どう脳をデザインしていくのかというそういう考え方に立つと、今の教育と全然違うものができてくるのです。
方程式を使ったら簡単じゃないか。けれども、目的がそうじゃないんだ、算数の言葉でしっかりと考えていく、理解していくことが大切。それが、将来的には専門用語を使いこなしたり、コンピューター言語を使ったりすることにつながってくると思うのです。そういうことを自頭として、自頭を作るような教育を、私は子どもたちに提供していきたいのです。

出口先生

出口先生

今回の第5話は、公式に当てはめて問題解決するのではなく、言葉を習得して論理で考えていくことの重要性についての対談でした。
第6話は「子どもの論理的思考力を育てるための親の心構え」についてお届けいたします。お楽しみに!

<プロフィール>
竹内 英人(たけうちひでと)
元愛知県公立高校教諭。現在名城大学教職センター教授。
未来の中高の数学の教員を養成している。啓林館中学、高等学校数学教科書著者FocusGold代表執筆者
その他著者多数

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