コラム

「察する文化」が日本語をダメにする!他者に伝達するという言語の本質を理解しよう
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出口 汪
論理的思考
出口式論理エンジン
読解力

現在、読解力の低下が大きな社会問題となっていますが、その要因の一つに日本人特有の「察する文化」があると言います。どうして「察する文化」が読解力低下につながるのでしょうか。論理的な思考を身につけ、問題解決能力を高めたい方はぜひご一読ください。

東進での講義終了と新たな門出

私は三十年近く、東進衛星予備校で講義をしてきました。正確にはここ十年ほどは講義しておらず、私の過去の講義を全国の衛星予備校で放映してきただけです。十年ほど前の講義、二十年ほど前の講義を、毎年東進予備校が対価を支払うことで、その放送権を得てきたわけですが、今年で契約が終了したため、今後東進で私の講義を聴くことは一切できなくなります。

長くお世話になった東進への感謝の気持ちが半ば、そして東進の生徒に講義を届けられなくなった寂しさが半ばというのが正直な気持ちでしょうか。しかし一方で、実はそれ以上に自由を得たという精神的開放感を得ています。この十年間「出口式みらい学習教室」を立ち上げ、さまざまな教材を執筆し、大学で講義をし、社会人向けのセミナーなどを開くことで、私の中では確実に視野を広げられたという自負があります。

現在の私の講義は過去の講義よりも格段に進歩しているはずです。東進衛星予備校の契約が終了することで、過去の講義ではなく、私の最新の講義をより多くの場に届けることが可能になったということなのです。

読解力低下の原因は「察する文化」にある

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今読解力の低下が大きな社会問題となっています。それは国語の講義が機能していなかったことの証拠でもあります。なぜ国語の講義が、実質的な効果を上げられなかったのでしょうか。

一つには活字となった文章への認識が希薄だったことにあります。私たちは日常会話において、相手が察してくれることを前提としています。しかし英語においては、疑問詞が文の先頭に来たり、否定語が動詞の前に来たりします。あるいはYESかNOが最初に明示されます。つまり今から話すこと(書くこと)は、肯定文なのか、否定文なのか、あるいは、疑問文なのかを予め明示しなければ、相手は理解してくれないと考えているのです。これは、人種も民族も文化も教養も異なる他者に伝える手段として、英語という言語が使われているからです。

ところが、子どもたちは「察する文化」の中にどっぷりとつかり、他者に伝達するという言語の本質を理解することがありません。現に、日本語では最後に「ない」を付ければ否定文になり、「か」を付ければ疑問文となります。それなのに私たちは会話をしていても相手が否定文なのか、疑問文なのかを考えることがありません。相手が察してくれることを前提に日常の日本語のおけるコミュニケーションが成り立っているからです。

学校では活字の性質も論理も教えてくれない

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私が指摘する「日本語の運用能力」とはそう言ったことを指しています。しかも、子どもの周囲には察してくれる人間たちしかいません。そういった日本語感覚のまま英語を学習したところで、本当の意味で語学力が身につくはずがありません。

国語は活字となった文章を読むことからはじまります。筆者は一切察してくれることのない、不特定多数の読み手に対して文章を書きます。そういった意味では、日常的な日本語よりも、むしろ英語のほうに近いのです。

察してくれない誰かに向かって文章を書くということは、それだけ伝えたいメッセージが筆者にあるということにほかなりません。筆者はその願いを込めて、不特定多数の読み手に文章を書くのですから、自ずと論理的にならざるを得ません。感覚は通用しない世界なのです。そして、学校では、そうした活字の性質も論理も教えることなく、ただ恣意的に教科書を教えているだけなのです。

読解力を鍛えるには音声講義が効果的+

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もう一つの原因としては、子どもたちが初見の文章を独力で読む経験をあまりもっていないということでしょう。学校では先生の説明を鵜呑みにし、テストではそれを答えているだけで、自分の力で教科書を読んで、理解しているわけではありません。問題集を解くことで、初見の文章を読む訓練をしようにも、子どもたちは国語の問題集の解説が理解できず、一冊を最後まで解き終えることができないでいます。

私は学校を変えようとして、「論理エンジン」というプログラムや教材を開発し、多くの学校で採用されてきましたが、すべての先生がそれを十分使いこなしているとは言えません。そこで、自由になった今、私は直接多くの人たちに講義をしようと思うようになりました。すでに学生や大人の学びなおしに「出口式現代文音声講座」でさまざまな音声講義を受けられるようになっています。

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