コラム

未来を生き抜く子どもの教育 第4話 『幼児期からの論理の積み重ねが大学入試にも影響する』
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共通テスト

数学の分野で論理式を活用されています名城大学竹内先生と水王舎代表取締役の出口汪との対談「未来を生き抜く子どもの教育」の第4話をお届けします。
今回は、共通テストにも影響を与える「論理の積み重ね」についてお話しいただきます。

第3話では、AI時代に対応し子どもの脳をデザインする時期や必要性についてのお話でした。今回は「論理を積み重ねて解決する力を身に着ける」についてお届けいたします。

3つの学力「思考力」「判断力」「表現力」の土台は「論理」

出口先生

出口先生

今、共通テストで話題になっていることがあります。数学・理系の科目の平均点がガタっと落ちています。それはなぜか・・色々な分析がありますが、文章がたくさんあると、そこで戸惑ってしまって時間をとられてしまったり、何をやってよいか分からない、ということがあるのではと考えています。
そのあたりは竹内先生、いかがでしょうか?

そうですね、共通テストは昨年は平均点が40点ぐらいで、今年が60点ぐらいに落ち着いています。去年が難しすぎたというニュースがありました。けれども、我々のような学教育数学のプロから見ると、確かに難しかったとは思いますが、問題の作り手の思いが伝わってきます。

3つの学力である「思考力」「判断力」「表現力」を考えると、一つ一つの問題について意図が見えてきます。
そして、その3つの学力の土台になるのは、まさに論理であります。
なぜ平均が昨年40点になってしまったかというと、単純に問題が難しくなったということではなくて「論理」の積み重ねがされてきていないということが現れたのだと思います。

竹内先生

竹内先生

共通テスト結果から見た「論理の積み重ね」の重要性

積み重ねは、すごく大変なので耐える力というものが必要になってきます。今の子供たちは、この耐性というものが弱くて、先生がおっしゃったように長文を一個一個読んで、これはまずこうでこうで・・と論理を積み重ねて解決していくということをせず、すぐ答えを見てしまいます。すぐヒントを見たり、スマホで調べてしまい論理を積み重ねるということがありません。
今までのセンター試験を解くには、論理の積み重ねを必要としない設問でしたが、それが共通テストでは急に一つずつ論理を積み重ねていってハードルをクリアしていくという問題が出題され、子供たちにとって相当ハードルがたくさんあったのでしょう。問題自体の難しさよりも、子供たちのこれまでの学び方が結果として表れたのだと思います。

竹内先生

竹内先生

出口先生

出口先生

そういう意味では、やはりテストが本来はかるべき能力をきちんと見るテストじゃないと、教育は変わらないと思います。
例えば「リンゴを2個、みかん3個、合わせて何個ですかと」いう問題で、リンゴとみかんは「具体」。それ対してに足す3というのは抽象なのです。

文章題というのは、具体的なものを抽象化していくという論理なのです。そういう論理のことを幼児期にきちんと教え、概念といったことを理解させないと単に機械的に言われた通り、計算するだけのものになってしまいます。

出口式では幼児期の教育に非常に力を入れています。脳が6歳までで大体出来上がっていくと言われています。では、どのように子ども脳ができていくのか。それは言語だと思います。だから言葉で情報を整理する・考えるということが重要になってくるのです。

言語を論理として理解するということは例えば、何度が暑いと感じるかは人によって異なるので「暑い」は存在するわけではなくて、「暑い」という言葉によって整理をしたということになります。
そのように言葉を整理して考えていくことで、脳が作られていく・・と考えた時、今の幼児の教育のやり方では足りていないことが多いと思うのです。

出口先生は常に論理と言語をキーワードにお話しされていますが、算数もその点、特に言語なのですが、今の子どもたちにとって難しいところがあるのが現状です。

算数の中で「割合」が、子どもは理解がなかなか難しいようです。
割合というのは、例えばクラスが40人いるところを全体として1と考える、ある状況では100人を1と考えるという、同じ人でも1を40とか100で考えるということが分からなくなってしまうのです。ただ、それが抽象概念で基本になる量が1なんだ、基準が1なんだということがきちっと頭の中に入っていれば、何にも難しいことはないのです。けれども、教科書とか参考書とか学校で、比べる基本になる量というのは公式化して教えてしまいます。だから子供は混乱してしまっているのだと思います。本当に根本的なところ、まさに土台になるところは論理なんだ、言語なんだというところは、私も強調したいです!

竹内先生

竹内先生

出口先生

出口先生

問題集を見ても公式化しているものが多く、そうすると何も考えずにそれに当てはめてやってしまうという・・これが暗記に繋がり、本当に問題を理解せずに解いてしまうようになってしまうのです。だから、ちょっと表現を変えて出題されるともう分からないという状態になてしまうのだと思います。算数にも論理の土台をしっかりとつけていかなければそうなってしまうのですね。

今回の第4話は、論理の積み重ねについての対談でした。
第5話は「公式ではなく言語の世界だけで算数を解くと自頭が強くなる」についてお届けいたします。
お楽しみに!

<プロフィール>
竹内 英人(たけうちひでと)
元愛知県公立高校教諭。現在名城大学教職センター教授。
未来の中高の数学の教員を養成している。啓林館中学、高等学校数学教科書著者FocusGold代表執筆者
その他著者多数

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