AIが苦手なものの一つに、文学作品の深い意味を読みとる読解力があります。なぜかというと、AIには感性がないからです。今回はそのあたりをひもといていきましょう。論理的な思考を身につけ、問題解決能力を高めたい方はぜひご一読ください。
文学自体が消滅!?
近ごろ、文学が読まれなくなり、文学自体が消滅の危機を迎えていると言われています。
近代文学は、主に明治の初めから戦後にかけての作品です。そのころはいつも戦争があり、明治維新、戊辰戦争、西南戦争、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦と、ほぼ十年ごとに日本中が大きな戦争に巻き込まれました。
作家自身が直接戦争に行かなくても、家族が友人、知人の誰かが戦争に行き、人を殺したり、殺されたりしたはずです。つまり、あの時代を生きていた人にとって、戦争はリアルであり、現実そのものでした。当然、作家の死を見る視線は今とは大きく異なっていました。
また当時の死因の第一位は結核でした。結核は伝染病であり、致死率はコロナよりもはるかに高いです。とくに若い人たちの間に伝染し、多くの作家たちがその病のために命を絶ちました。戦争や死、病を身近に感じ、そうした状況の中で人生や世界を深く見つめ、それにふさわしい表現方法を模索した作家たちの作品は、やはり読むべき作品なのです。
誰でも安価に文学が読める時代
私は学生のころ、なけなしのお金をはたいて、夏目漱石、森鴎外、芥川龍之介、太宰治、川端康成と、次々と文学全集を購入しました。これらの書物の重量感は圧倒的であり、引っ越しのたびに何十箱の段ボールに詰め込んで運びました。地震の際には棚から落ちてきて、危うく命を落としそうになったこともありました。それでも、やはりこれらを捨てるには忍びなかったのです。
ところが、今Kindleでこれらの全集を信じられないほどの安価で購入できます。森鴎外も、夏目漱石も芥川龍之介も、99円から199円ですべてに手に入ります。私のスマートフォンには、さまざまな作家の全集が何千冊と入っていて、いつでも手軽に楽しめます。それなのに多くの人たちはこうした楽しみを自分のものにすることはありません。なぜでしょうか。
それは、今や文学作品を読めなくなっているからです。読んでも理解できないか、おもしろいと感じないから。これほどもったいないことはありません。そうなると、語彙力も、読解力も、思考力も、表現力も身につきません。そして、教養も。
そこで、私はYouTubeチャンネルで、新たに文学講座を解説した。文学のおおしろさ、深さを無料で提供していく予定です。またYouTubeチャンネルと連動して、noteで「学びチャンネル」のガイドを無料で連載しています。
AIが苦手な読解力や感性、教養を身につけるべき
AIには文学作品を鑑賞する能力がありません。だからこそ、これからの時代はAIに不可能な読解力や感性、教養を身につけるべきなのです。
私たちは、現実世界の中で齷齪せざるを得ないのですが、それとは別個の、深い静謐な世界をもっているということは、実に幸せなことです。私はちょっとした空き時間にスマホを取り出し、鴎外や漱石の作品を読みふけります。こんなおもしろいことはないし、自ずと教養を身につけることもできます。現代と価値観の大きく異なる世界を理解することで、自分の世界を広げることも可能になるのです。
こうした教養を身につけている人は実に魅力的です。陳腐で凡庸な感性ではなく、人とは異なった視点でものを見ることができ、なるほどと思わせる表現力ももち合わせている。話しても話題が尽きません。
私たちは本当に幸せな時代を生きています。ほぼ無料同然で、こうした文学作品を好きなだけ読みふけることができるのです。しかも、それらをポケットに入れて、どこにでも連れていけます。しかしそのためには、文学のおもしろさを理解し、それらを楽める読解力を身につけなくてはいけません。
どんなベストセラーであっても、十年後に生き残っているかどうかはわかりません。ましてや百年後となるともっと大変です。しかし文学作品は、これらの時代を超えて多くの人たちに読み継がれてきたものなのです。なので、おもしろいに決まっています。そして、そのおもしろさを理解できる読解力こそが、現代人に必要とされているのです。