コラム

国語教育の核心 井上秀和先生が語る「文章読解の鉄則」~出口汪先生 × 井上秀和先生 対談(後編)~
出口式
論理力
思考力

「国語はセンスではなく、論理で伸ばす時代へ。」
出口汪と井上秀和先生、二人の教育者が語る“読解力の核心”。
教えにくいと言われてきた国語に、いま明確な道筋が生まれます。
子どもが「わかる!」と変わる瞬間――その指導の本質に迫ります。

英語講師から「国語専門」へ

井上先生は、もともと英語の講師として教育の世界に入られたそうです。
「最初は英語を教えたくて塾業界に入りました。高校生を教えることを目指していたんですが、まずは中学生をしっかり教えようと思い、社員として中学塾に入りました。」

ところが、ある時期から小学生部門への異動を命じられます。
「最初は算数をやりたいと希望したんですが、『算数は人気だから国語をやってほしい』と言われて(笑)。そこから必死に国語を勉強するようになったんです。」

「国語は教えられない」という壁

井上先生が最初に感じたのは、国語教育の“曖昧さ”でした。
「算数なら、解き方や答えに至る過程が明確にありますよね。でも国語は、“本文にこう書いてあるからこれが正解”としか書かれていない問題集が多い。つまり“どうやって導くか”が書かれていない。」

だからこそ、多くの保護者も教師も「国語は教えにくい」と感じているのです。
「生徒たちにとっても、国語は“おまけの科目”という扱いでした」と井上先生は語ります。

「先生」は生徒だった

そんな中、井上先生が頼りにしたのは、教壇に立ちながら出会った生徒たちでした。
「周りにお手本となる先生がいなかったので、教室で子どもたちに教えながら、どこでつまずくのかを全部メモしていきました。その記録をまとめたのが『文章読解の鉄則』なんです。」

この姿勢こそが、井上先生の原点。
「結局、私の先生は“生徒”だったんです。」

「国語は伸びない」はもう過去の話

かつては「国語は勉強しても伸びない」と言われてきました。
「でも今は違います」と井上先生。
「算数で結果を出す生徒は、国語でも必ず伸びる。なぜなら、算数的な“論理の筋道”を国語に応用すればいいんです。」

出口先生もこれに深くうなずきます。
「まさに国語こそ“論理の教科”ですよね。しかも国語は全教科の土台。どの科目も日本語で思考し、表現するわけですから。」

「選択肢がない世界」で生き抜く力を

出口先生はこう続けます。
「社会に出たら、選択肢は与えられません。自分で考え、自分の言葉で説明する力が必要です。その訓練ができるのが、まさに“国語”なんです。」

井上先生も同意します。
「大学入試の小論文も、社会に出てからのレポートも“選択肢のない問い”です。だからこそ、国語の学びが一生ものになる。」

「100の熟技」に込めた思い

井上先生の著書『塾技100国語』には、100の技が収められています。
「“100もあるの?”と引かれる方もいるかもしれませんが、算数にもたくさんの公式がありますよね。国語だって、本気で学べばいいんです。」

ただし、「全部を暗記する必要はない」と井上先生は笑います。
「理解して使えるようになればいい。100の塾技は、読解の“道しるべ”なんです。」

国語は、すべての学びの原点

出口先生は最後にこう語ります。
「国語は、もっとも差がつく科目です。しかも、一度“解き方”を身につければ、大学入試でも社会でも通用します。まさに一生ものの力です。」

井上先生は穏やかにうなずきました。
「国語は、子どもたちの未来を支える“思考の言語”です。だからこそ、いま本気で学ぶ価値があると思います。」

最後に

今回の対談を通して改めて感じたのは、「国語を教えるとは、考える力を育てること」だという点です。
井上先生の“100の熟技”は、単なるテクニックではなく、論理的思考の体系そのもの。
論理アカデミーとしても、この“思考の土台づくり”をこれからも大切にしていきたいと思います。

引用:出口汪の学びチャンネル

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